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カプリオール組曲    - 2003.3.7

 今回は、曲目解説です。あまり演奏する機会のない曲を演奏することになったので。とても、楽しい曲です。
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 ピーター・ウォーロック/弦楽オーケストラのための「カプリオール組曲」
 @バスダンス  Aパウ゜ァーヌ  B トゥルディオン  C ブランル  Dピエ・アン・レール  Eマタサン

 この曲の作曲者ピーター・ウォーロック(Peter Warlock)は、1894年、ロンドン生まれのイギリスの作曲家で、「ウォーロック」という名は作曲用のペン・ネームで、本名はフィリップ・ヘセルタイン(Philip Heseltine))といいます。幼いころからグレ・シュール・ロワンに住む伯父の紹介でディーリアス(イギリスの作曲家)と交わり、彼の影響を強く受けました。このことは、初のディーリアス評伝の出版したり、自身の弦楽セレナーデをディーリアスの60歳の誕生日に捧げていることなどにも表れています。100曲以上優れた歌曲を残しましたが、器楽作品は少なく、余りある才能に恵まれながら、1930年、36歳の若さで自殺し、この世を去りました。
 本日は、彼の数少ない器楽曲の一つで、28歳のときに作曲された、弦楽オーケストラのための「カプリオール組曲」(Capriol Suite , 全6曲の舞曲)から4曲、バスダンス、ブランル、ピエ・アン・レール、マタサンを取り上げます。
 「カプリオール」という名前は、16世紀のフランスの聖職者、トワノ・アルボー(1525-1595)の著書「オルケソグラフィー」(舞踏記譜法、1588年、著者と教え子の対話形式で書かれた、舞踊ステップの解説書)に出てくる教え子の名前「カプリオール」に由来しています。それぞれの舞曲は、この本を元に書かれており、20世紀の作曲家ウォーロックが書いた16世紀風舞曲集といえます。
 アルボーの生きた16世紀は、実は、バッハ(1685〜1750年)よりも100年以上前、我々から見るとどちらも同じ「昔」に見えてしまいますが、流行っていた舞曲も違うし、同じ名前の舞曲でも内容が異なるものもあります。普段聞きなれた舞曲とは、違った魅力をお楽しみください。
@バス・ダンス
中世後期とルネッサンス時代の代表的な宮廷舞踏で、15世紀に、発展の頂点に達し、16世紀中期を過ぎた頃に姿を消しました。名前(低い舞踏)から暗示されるように、荘重な歩調で、速い動きや跳躍を含まない特徴を持った踊りで、はじめのうちは、様々なステップの形があり、非常に難しい技術、かなりの熟練が必要とされていましたが、次第に単純化され、誰でも踊ることのできる「普通のバス・ダンス」となり、社会の上層から下層に伝わりました。本日演奏するバス・ダンスは、アルボーの生きた16世紀のスタイルですから、発展段階としては、最後の段階のものです。数多くの小部分をもつ旋律が、何度も繰り返されます。
Aブランル
庶民的な性格のフランスの舞踊で、何世紀にもわたって広く普及しました。数組の男女が輪になって、あるいは列を作って踊る集団の舞踊で、音楽は踊り手たちの歌であることが多く、横方向へのステップによる動きを特徴としています。
アルボーの著書では、ブランルは、大きく4つのタイプに分類されていて、どんな祝祭にも最初の踊りとして採用されたとあります。本日演奏するブランルは、このアルボーの分類の、2拍子の2+1小節単位の比較的落ち着いたブランル・サンプルに始まり、2拍子の2+2小節のブランル・ドゥブル、非常に活発な不規則な混合拍子のブルゴーニュのブランルへと続きます。異なった形式のブランルを組み合わせることによって、緊張感を出しています。
Bピエ・アン・レール
舞曲としては、ガイヤルトに分類されます。ガイヤルトは、イタリア語のgagliardo「活発な」に由来する語で、16〜17世紀初期にかけて流行した快活な3拍子の宮廷舞踊及び舞曲です。ほとんどの場合、ヘミオラを使用しており、6つの拍を3+3に分ける通常の分割が、特に終止の直前では変化し、2+2+2の分割になっています。本日演奏するのもこの形です。この舞曲の「より高く力強く跳ぶ」特徴は、音楽がそれほど速く演奏されないことを暗示しています。
Cマタサン(戦いの踊り)
一群の男性のグループによる戦闘を模倣したフィギュア・ダンスで、大きく2種類あり、一つは、道化師によるグロテスクな踊り、もう一つは、身分の高い観客の前で若い貴族が演じる巧みな剣の舞です。共通するのは、模擬戦闘を含み、社交舞踊というよりも舞台で踊られるということです。アルボーの記述は、後者の「貴族」的なマタサンで、古代ギリシアの戦いの舞になぞらえ、衣装やステップと並んで、4人の踊り手が正方形を作って順に剣を交わしながら旋回しすれ違う速い動きの「討ちあい」や、明らかに若い貴族のために意図された名人芸的な剣技について、細かい指示を与えています。本日演奏するのもこの形に基づいています。曲は、剣と剣がぶつかる音が、今にも聞こえてきそうな雰囲気です。(の)
(参考文献:ニューグローブ音楽大事典)
※2003年3月9日午後、目黒のパーシモン・ホールにて演奏…そのときのプログラム解説より



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